漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

上場株式の「配当所得」と「譲渡所得」、所得税と住民税で異なる課税方式を選択するメリット・デメリット。

確定申告シーズン到来。税理士法人水無瀬野も戦場となり、毎日お客様とお会いしては書類の山がうず高く積み重なり、夜遅くまでPCと向き合っております。

今回は実務の話で、株の「配当所得」と「譲渡所得」の話です。平成29年度の改正により、所得税と住民税で異なる申告が可能となったこと、ご存知ですか?

 

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上場株式の申告はややこしい。

まず、配当所得については「申告不要」「申告分離」「総合課税」の3つの課税方法から任意に選択することができたんですね。これが平成29年度税制改正によって、所得税と住民税で異なる課税方式を選択して有利な課税方法方式を選択できるようになりました(29年4月1日からの住民税からの適用です)。*1

また、特定口座内、すなわち譲渡益について源泉徴収されている上場株式の譲渡所得も、同様の選択が可能です。ただ、こちらは総合課税という選択はできないので、「申告不要」「申告分離」かの選択になりますが。

もちろん、所得税と住民税で同じ課税方法を選択することも可能です。というか、大部分の方はそうしておられることでしょう。何も考えずに所得税の申告書を提出するとそうなります。これまではそれで十分でした。

ところが、この改正によって所得税と住民税で異なる課税方式で申告することが可能になり、メリットが生まれることになりました。これは本当に画期的なことで、人によっては税金の問題にとどまらず、1年間の支出額が大きく変わります。

結論を先に述べてしまうと、国民健康保険、保育料、高額医療費などは住民税の所得割額で金額が決定されるので、住民税の所得は低い方が支出は少なくおさえられるのです。さらに、住民税の所得が低くなるということは、所得税の申告では無理でも住民税の申告では控除対象配偶者や控除対象扶養親族となれたり、所得税の申告よりも医療費控除・寄附金控除の控除額が増えたり、する可能性があります。

これは本当に大きい。 一時期、ふるさと納税することで住民税の所得額を低くする裏技が問題になったことがありましたが、今回の改正はある意味ではもっとインパクトが大きい。というのも、ふるさと納税の件は「予期していなかった」裏道の可能性が大なのですが、この改正は「知ってる人だけが得をする」制度となったからです。これ、一般的にはまだまだ浸透してませんよね。

 

ただ、この判定は非常に難しい…。というか一般的な方式を示すのは無理です。まず、前提条件として、「配当所得だけある人」「上場株式の譲渡所得だけある人」「配当所得と上場株式の譲渡所得の両方ある人」の3パターンありますし、さらに譲渡所得といっても、「益」がある場合と「損失」がある場合もあります。このそれぞれについて国民健康保険、保育料、高額医療費、配偶者控除、扶養控除の判定があるわけで、とても一般的な公式はありません。特に高額医療費なんて申告の時点では申請するかどうかわからないし。

税理士の立場から考えても、あまりの複雑さにゾッとします。特に、「上場株式の譲渡損失の繰越控除額」……! これ、所得税と住民税で、金額がズレる可能性があるじゃないですか! 毎年の管理・判定が大変ですよ。

さて、肝心の住民税の申告ですが、所得税の確定申告とは別に、住民税の申告をすることになります。e-taxなどで電子申告した方も、各市町村から納税通知書が届く前に住民税の申告をすれば問題ありません。ただ、所得税と住民税は所得控除が異なるので、その点で留意が必要。単に所得税の金額を転記すればいいわけではありません。

この申告、本当に複雑なんです。

所得税、住民税、そして健康保険料などについて、最も有利な申告方法を考えるなら、税理士に相談することをオススメします。でも、これは社会保険制度にも関係してくることなので、社会保険制度にも詳しい税理士が望ましいですね。

……ここで宣伝ですが、わたしが所属する税理士法人水無瀬野は、この問題について深く吟味し、多種多様なお客様に、それぞれ最良の申告方法をご提案できる準備をしております。相談を希望される方は、税理士法人水無瀬野、または わたし個人 にご連絡ください。必ず24時間以内にお返事いたします。不安がらせるつもりはありませんが、健康保険料を考慮すると、人によっては年間で数十万くらい損する場合もあります。

お気軽にご相談ください。

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最後に、参考までに税理士法人水無瀬野の近隣の島本町高槻市のサイトを引いておきます。

 

 

所得税・個人住民税ガイドブック 平成30年12月改訂

所得税・個人住民税ガイドブック 平成30年12月改訂

 
平成30年度版 住民税計算例解

平成30年度版 住民税計算例解

 

 

*1:改正前においても、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できたようですが、手続きが明確にされていなかったようです。