相続税の課税は、「遺産税方式」と「遺産取得税方式」に分かれます。日本は、この両者の折衷案ともいえる方式を採用しています。
アメリカの現状は……これなかなか香ばしいですね
(経済気象台)民主党大統領候補と税制 (2020年4月1日)
米民主党の大統領候補者指名争いではバイデン氏がだいぶ優勢になってきたが、有力候補が掲げてきた税制改革案を概観しておこう。
序盤は、左派のウォーレン氏とサンダース氏の富裕税構想が目を引いた。その背景には、トランプ政権の富裕者優遇税制により、超富裕層がその秘書たちよりも税負担が軽くなってしまったアメリカの現実に対する批判がある。
またサンダース氏の格差是正法人税の構想は面白いものだった。具体的には、各企業のCEO(最高責任者)と従業員の報酬(中央値)の格差が50倍を超えると、その倍率に応じて追加税率を課すというものである。500倍を超えると最高税率の5%にもなる。CEOは、自分の報酬だけを一方的に引き上げることを再検討せざるを得ないことになる。
バイデン氏は中道路線である。富裕税構想はなく、高所得に対する所得税率の引き上げなどが中心だからである。しかし、米相続税特有の「自動的増額取得価額」を廃止するという提案は影響が大きいかもしれない。
米国の相続税は、遺産税方式だ。トランプ大統領になってから約13億円の遺産まで非課税となっている。仮に父親が昔1億円で購入し、今10億円する不動産を息子に残したとしても相続税はかからない。次に息子がその土地を10億円で売却しても、取得費として控除できるのが1億円ではなく相続時の時価10億円になる。相続時の時価が自動的に取得価額となり、結局、譲渡所得にも課税されない。
金持ちが相続でより金持ちになれる米国。庶民までもが相続税を心配して、あの手この手の節税策を行う日本。どちらが健全なのだろう。
(比叡)