漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

(朝日新聞 経済気象台 11/3)令和2年の年末調整は大変だ。

いやあ、本当ですよ、今年の年末調整は悩ましい。

そもそも年末調整(と給与からの源泉徴収制度)は問題点がよく指摘されるところです。

年末調整が多くの会社の事務負担になっていることや、従業員の個人情報の保護の問題などでしょうか。

かといって、わたしは特に廃止すべきであるとは思いません。ここまで慣行として確立した制度を廃止するのも実務的には現実的ではありませんし、自分たちで確定申告するほどには、今の日本人のFAST分野の知識は豊かではありません。

 

でも、たしかに今年の年末調整は変更点が多くて、総務部は大変そう。

まず、従業員の方に正しく書類を提出してもらわなければならないし、間違いがあった場合の「扶養控除等の是正」まで考えたら大変だ。

もっとも、この是正は、いわゆる増額更正の場合だけ指摘があるので、「ひとり親控除」や「所得金額調整控除」が抜けてても、当局からの指摘はないかもしれませんが。

  

そういう現場の心配を踏まえての言葉なんです、この記事は。

 

令和2年版 これだけでOK 速攻! 年末調整

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  • 作者:安田 大
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 年末調整やめてみては

 (朝日新聞 経済気象台 11/3)

コロナ禍で、多くの働く人々や中小企業が疲弊している。これを受けて、国税庁は納税手続きなどで負担軽減措置をとっている。

 だが、所得税の年末調整は今のところ特に変わりはない。これに対し、税理士から「今年の年末調整をやめて欲しい」という声が上がっている。
 年末調整の書類が難しすぎるようで、「確定申告書を書くほうがよほど簡単だろう」とまで言われているという。控除制度の変更で、例年以上に複雑になっているようだ。

 また、所得の内容が多様になり、親族の所得を年内に正確に見積もるのは難しくなっている。扶養者情報の修正による事務負担も増大しつつある。

 もともと年末調整は、申告納税制度に抵抗していた当時の大蔵省が事務負担を減らすために導入したものだ。だが、税制の民主化という申告納税の趣旨に合わないと指摘されてきた。

 税額の精算手続きを勤め先が行うので、多くの給与所得者を税制から遠ざけ、無自覚者にしてしまった。おまけに企業は、その作業の費用を負担させられている。

 そもそも日本の源泉徴収の仕組みは厳格な自己完結型で、国際的にもまれである。

 わかりやすく言うと、多くの国々はおおまかな税率で一律に税金を前取りし、後から確定申告で調整させる制度だが、日本では税率などが細かく規定され、確定申告しなくてもすむようにされている。過大徴収などのミスは源泉徴収自体を是正しなければならず、申告での調整が許されない制度とも言える。

 今の仕組みは問題が多い。思い切って今年は年末調整をやめ、確定申告で最終調整できるようにしてみてはどうだろうか。(比叡)

 

「確定申告で最終調整? それなら毎年そうしてるよ?」って?

いやいや、それは必要がある人がそうするのであって、ここで言ってるのは今年の日本人すべての年末調整を「未済」にして、各人が確定申告したら、ということだと思うんです。

さすがにそれは現実的ではないなあ。

 

現行の税法では、年末調整は義務化されており、その義務を守らなかったら、責任を追うのは源泉徴収義務者である法人。

この法人の義務を軽くしてあげたら、という意図だと思うんですけど、それは難しいですよ。

 

最後の2文の飛躍が残念でした。

しかし、今年の年末調整は大変なのは変わりがないわけで。

「田中さん、ひとり親控除の確認したいので住民票もってきてください」とか、神経使いますよね。

悩ましいです、令和2年の年末調整。