漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

住宅ローン減税 延長へ 政府・与党 期間など詰め(H31 税制改正(5))

税制改正 動向ウォッチ記事5回め。

今回は思いっきり利害関係者間の調整の趣です。

 

住宅ローン減税 延長へ  政府・与党 期間など詰め

 来年10月の消費増税の対策として、政府・与党は住宅ローン減税が受けられる期間をいまの10年間から延長する方向で調整に入った。増税後に住宅を買う人への支援を手厚くし、増税前の駆け込み消費とその後の反動減を抑える狙いがある。今後、延長期間などを詰め、年末に決める与党の税制改正大綱に盛り込む。

 

【要約】

 住宅ローン減税は、住宅ローンを利用して住宅の新築や増改築などをした場合、借入残高に応じて年間で最大50万円所得税や住民税から控除する措置。いまは原則、2021年末までに住宅を取得した人を対象に10年間控除を受けられるが、この控除期間を延ばす方向で検討する。

 増税後の住宅の購入支援策としては、一定の年収以下の人を対象に購入費の一部を補助する「すまい給付金」の増額などが決まっている。

 だが、国土交通省や関係業界は増税による負担増分を補うには足りないとし、控除期間を5年間延ばすよう主張。公明党も同様の主張で、自民党も一定の延長は必要と判断している。これに対し、財務省は大幅な延長には慎重な姿勢を示している。  (伊藤舞虹、豊岡亮)

 

【 詳細記事 】

自民、公明両党は21日、税制調査会の総会をそれぞれ開き、消費増税に伴う反動減対策の検討を本格化させた。自民党の宮沢洋一税制調査会長は総会の冒頭、「何より大事なことは来年の10月1日に消費税を10%に引き上げ、軽減税率を導入することを着実に円滑に実現することだ」と述べた。

 そのための増税対策の柱のひとつが、住宅購入の支援策だ。このうち住宅ローン減税は、住宅ローンを利用して住宅の新築や増改築等をした場合、借入残高に応じて年間で最大50万円所得税や住民税から控除する措置。いまは原則、2021年末までに住宅を取得した人を対象に10年間控除を受けられる。

 ただ、増税後の対策としては、すでに住宅購入費の一部を補助する「すまい給付金」を現在の最大30万円から50万円に引き上げ、対象者の年収要件も510万円以下から775万円以下へと広げることなどが決まっている。このため、財務相の主税局は「住宅支援は対応済み」として、控除期間の延長に消極的だ。

 しかし、住宅メーカーなどでつくる住宅生産団体連合会が与党に示した試算によると、すまい給付金を増額しても、年収1千万円未満の人の消費増税による住宅購入時の負担増分を相殺するには、控除期間を5年間、延長することが必要という。業界はこの試算を根拠に、いまの10年間の控除期間を15年に延ばすように主張。公明党がこれに同調し、延長の方向で検討することになった。増税対策では、自動車の取得や保有にかかる税負担の軽減も柱だ。財務相総務省も一時的な減税は実施する方針だが、自動車業界は恒久的な減税を求めており、調整は難航しそうだ。

 このほか与党税調では、大都市に集中する法人税収を地方に配るしくみの見直しや、婚姻歴がないために所得税や住民税の「寡婦控除」が受けられないひとり親の税負担軽減についても検討する。   (伊藤舞虹、豊岡亮)

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宮沢洋一税制調査会

H31 税制改正については、このブログでも動向を追ってきました。

公明党の同調だとか、経産省 × 総務省 の争いは過去記事でも取り上げました。

 今回の記事で改めて考えたことは、住宅業界は優遇されているなあ、ということ。もちろん、住宅は高額な買い物であり、この業界の景況感が日本経済に大きく影響することは理解しています。しかし、増税の度に景気への影響を考慮して減税措置を取るって、エラく優遇されているようにも思われますね。財務相の主税局が「住宅支援は対応済み」として、控除期間の延長に消極的なのも納得できます。でも、結局控除期間は延長されるのでしょうね。これまでのいろいろなメディアでもそのように報道されてきましたし、上の記事でも「延長の方向で検討」とありますので。

一方で、自動車税をめぐる経産省総務省の争いはわかりませんね。こちらはもう少し動向を見ていきたいと思います。

ただ、個人的には「寡婦控除」見直しの議論の過程について知りたいところです。