漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

ゴルフ場利用税が廃止!?  …ただし、実現の見通しは暗く。

こんな「運動」もあるのですね。典型的なロビー活動というやつです。

一応、毎年の税制改正の視野にも入っているようです。

 

ゴルフ場利用税超党派で廃止案 地方は反発か
朝日新聞 2019年 1/30)

 超党派議員連盟が30日、ゴルフ場の利用者が負担する「ゴルフ場利用税」を廃止する議員立法案と、国家公務員と利害関係者とのゴルフを解禁する国家公務員倫理法改正案をまとめた。だが、利用税の税収に頼る地方自治体は廃止に強く反発し、毎年の税制改正でも見送りが続いており、実現は見通せない。

 この日、超党派ゴルフ議連(会長=自民党衛藤征士郎・元衆院副議長)と自民党ゴルフ振興議連(同)が合同総会を開き、法案を了承。今後、賛同者を募り、今国会への提出をめざす方針を確認した。

 ゴルフ場利用税は、都道府県が1日あたり1200円を上限に決める地方税で、2017年度の平均税額は1日あたり650円。447億円が自治体の税収になっている。

 法案では、21年4月に利用税を廃止し、自治体の減収分を国が穴埋めする交付金を創設。財源は「消費増税で生じる一般財源の余裕分」を充てるという。16年のリオ五輪でゴルフが正式種目になったこともあり、東京五輪を追い風に実現をめざす考えだ。

 だが、消費税収は全額を社会保障費に充てることが決まっており、借金頼みの国の財政状況では「余裕分」も見込めない。

 また、国家公務員倫理法改正案には、職員が自分でゴルフ代を負担する場合に限って利害関係者とのゴルフを認める例外規定も盛り込んだ。ゴルフ振興を後押しする狙いだが、そもそもこの規定は旧大蔵省幹部の過剰接待問題などを契機にできた経緯があるだけに、見直しには反発が予想される。(伊藤舞虹)

 

伊藤舞虹記者記事。税制改正記事からお世話になっております。

さて、この記事、この手の記事に読み慣れてない人が端的に言葉の使い回しに飛びつかないよう、慎重に読んでいきましょう。下線が引いてある箇所は、読みにくい/誤解を招きやすい表現だとわたしが思ったところです。

まず、「法案を了承した」。これ、「超党派ゴルフ議連」というロビー団体が、国会に提出できたらいいな、と思う案を内部で了承しただけ、という意味ですから。公的なことはまだ何も決定されていませんよ。「法案が了承されたんだって!」と舞い上がらないでください。

次に、「東京五輪を追い風に実現を目指す考えだ。」これはつまり、税金が廃止されれば、利用料が安くなるので、オリンピックを機にゴルフをやってみよう(コースを回ってみよう)と思う人通いやすくなり、利用者も増えるでしょう! ということでしょうね。

最後に、「この規定」とは「国家公務員倫理法」のことで、「見直し」とは「国家公務員倫理法改正案」のことです。「見直し」=「改正案」なわけですね。

…こうしてみてみると、この改正案、かなり実現度が低いことがわかります。ただ、「改正案」を「了承」し、国会に提出しようとするまで形になったのは初めてなのかもしれません。だからそれを記事にしたのか、または「記事にしてくれ」と強く頼まれたのか。

 

余談ですが、このゴルフ場利用税、消費税の課税区分は「不課税(≠非課税)」です。勘定科目は「交際費」となることが多いでしょう。ただこのゴルフ場利用税、少額であり、カード払いであったりするため、利用料とこの税金を区分せず、両者を合わせて「課税仕入れ」としてしまうことがあります。本則課税の場合、不課税仕入れを課税仕入れとすることは、納税者有利/課税当局不利な処理です。そこで、税務調査があった場合に、これを調査職員への「お土産」とするとかしないとか…。

 

私見ですが、ゴルフ場利用税を負担されている方は、廃止を訴えるよりも、納税していることをアピールした方がメリットが有るのではないでしょうか。ゴルフ場を利用するのは庶民というよりも富裕層の方々なわけで、そういう方々は地域の人々への影響力も強いでしょう。ならば、単なる一時的なキャッシュフローの損得でなく、「わたしはその全額が地域の財源となるゴルフ場利用税を必ず支払っております!」と宣言したほうが地域の人々の共感を得られやすいのではないでしょうか。

え?そうすると、接待の道具やステータス・シンボルではなく、純粋にスポーツとしてゴルフを愛する人々の負担になるんじゃないかって? 特に、プロゴルファーを目指す若い人々にとっては。

大丈夫。そういう人々のために、この税金の非課税範囲は広く設定されています。具体的には、以下の人々。

 

・満18歳未満の方

・満70歳以上の方

・障害者の方

国民体育大会(予選会を含む)のゴルフ競技に参加する選手、学校の学生・生徒・児童・これらを引率する教員(学校の教育活動としてゴルフを行う場合に限られます)

 

あ、ここでいう「学校」とは、「小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、大学(短大を含む。)、高等専門学校、盲学校、聾学校及び養護学校」のことなので、幼稚園超の子どもは非課税ですよ。だから、こどもの教育という観点から考えると、配慮は十分されているのではないでしょうか。18歳以上70歳未満の方については……まあ、考慮されていないといっても過言ではないかもしれませんね、残念ながら。しかし、この廃止により、減少するであろう地方の財源は、「消費増税で生じる一般財源の余裕分」を充てる、というのならば、消費税の増税について意見が分かれている超党派、大丈夫なのでしょうか? だからこその超党派なのだ、という意見もあると思いますが、党の方針に反対してまでゴルフ場利用税の廃止を主張することができる議員がどれだけいらっしゃるのか。以後、注視して活動を確認したいと思います。

 

ゴルフ場といえば、所得税法上の取扱でクセのあるのがゴルフ会員権。そんなことも思いだしました。

 

ゴルフ場の税務会計 (1984年) (業種別税務マニュアル)

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判例・裁決からみたゴルフ会員権をめぐる税務事例

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