日欧EPA発効。消費者には一定の恩恵をもたらす一方、輸入品の攻勢を受ける国内生産者は喜べません。そのことは重々理解しつつも……少しうかれてます。
イオンはフランス産ワインなどの「先取りセール」を実施し、2/1 には300商品を平均で約1割値下げしたとか。さらに、明治屋は3/1にフランス産、イタリア産ワインを2-10%値下げし、赤や白より関税が高いスパークリングワインは特に値下げ幅を大きくするとか! この明治屋、EUからの輸入が多いチーズ売り場の面積を2倍にした店舗もあるそうですよ。
消費者目線で考えると、これはうれしいことですよ。これよりも安くワインが飲める!
……と、少し冷静になりましょうか。EPAの発効により、撤廃されるワインの関税。現行では、15%か、1L 125円の安い方。もう少し具体的にいうと、ワインのフルボトル750ml これまでかかっていた、最大93.75円が撤廃! …え?
ナチュラルチーズについては、現行29.8%の関税(高い!)が、チェダー、ゴーダは発効16年目に完全撤廃! カマンベール、モッツァレラなどは低関税枠が新設。導入時は2万トンのこの輸入枠は3.1万トンに拡大…といってもいまひとつピンとこないので、このサイトを参考にしましょう。
このサイトによると、日本の世界からのチーズの輸入量は25万トン。そのうち、EUからの輸入量は7.8万トン。約30%です。そう考えると、今回の低関税輸入枠は、EUからの輸入量の約25%。最終的にも約40%。…う~ん、微妙なところですね。まさに政治的な駆け引きが表面化した結果のように思われます。
ワインにしても、チーズにしても、手放しで「安くなった、バンザイ!」ということではありません。なので、国内の生産者にとっても「たちどころの脅威」とはならないのではないでしょうか。
ただ、長期的に考えると何らかの対処が必要なのは事実で、それに関して、上にリンクを貼った朝日記事では次のように伝えています。
農林水産省は、日EUのEPAによって国内の農産物生産額は最大686億円減ると試算するが、その約3分の1は乳製品だ。乳製品はTPPでも最大314億円の影響があるという。販売が落ち込み、原料となる生乳の価格が下落すれば、酪農家には打撃となる。
安い輸入品に対抗するため、今のうちに経営規模を拡大して競争力を強化する動きも出ている。
生乳の生産量が全国の半数超を占める北海道の中でも有数の酪農地帯、中標津町の纓坂(おさか)直俊さん(39)は昨年5月、国の補助金を活用し、約3千万円の搾乳ロボットを2大購入した。乳牛をコレまでの倍、200頭超に増やす計画で、「自由貿易への不安はあるが、生産コストを下げて乗り切りたい」と話す。 (長崎潤一郎)
ピンチがあればチャンスあり。
以上述べたのは、すべてEU→日本の輸入に関しての話ですが、日本→EUの輸出の関税の撤廃もあります。
たとえば、牛肉は12.8% + 100キロ 304.1 ユーロの関税が即時撤廃、緑茶は3.2%の関税が即時撤廃! これは確かにビジネスチャンスですね。
今回の日欧EPA撤廃、ワイン・チーズ派としては、現時点では少しだけ喜んでおくにとどめておきます。
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