文化系税理士の佐藤です。
前回に引き続き、今回も『ギャラリーフェイク』について。今回は「『男と女』に関する格言」編です。
細野不二彦先生のマンガには、必ずといっていいほど男と女のロマンスが存在します。少年少女の清々しいもの(『さすがの猿飛』)や青年期の悩ましいもの(『ママ』)、安定した夫婦のもの(『愛しのバットマン』)など、実にさまざま。あれ、『Gu Gu ガンモ』は? …って、あれは「電気アンマ」を流行らせた功績があるから、まあ、いいじゃないですか。
その中でもわたしが好きなのは、『ギャラリーフェイク』で種々あらわれる、屈折した愛の形。毎回完結なだけあってたくさんありまして、極論しちゃうとすべてが何らかの愛の話です、とまとめてしまいたいほど。ホント、挙げだすとキリがありません。
なので、今回は悩める男たちへの人生訓めいたものだけをピックアップ。40年ぽっちしか生きていないわたしにはあまり大きなことは言えませんが、どの言葉も真理をあらわしている、と思います。
第15集「ハーフ アンド ハーフ」
男にはね、勝ち目がなくても挑戦しなくてはならないときがあるんですぜ。
そのとおり! さすがフジタ、わかってるゥ! …もっとも、こういう意気込みで勝負するときって、たいてい負けますけどね、男は。
ちなみに、このときの勝負は三田村館長との飲み比べ。結果は多くの読者の予想通り、フジタの惨敗です。すべて計算ずくで動いているようにみえるフジタのカワイイところが垣間見えるシーンでもあります。
第26集「誓いの錠(ロック)」(後編)
”錠”と”女”は似ているって、鍵師たちはよく言うんだ。向こうの気持ちに逆らわず、やさしく根気よく接してやれば、必ず開いてくれるってね。
これもいい言葉ですね。わたしも使おうかな。「『税務調査官』と『女』は似ているって、税理士たちはよく言うんだ。向こうの気持ちに逆らわず、やさしく根気よく接してやれば、必ず開いてくれるもんです」とか。…ありえないか。それに下手すりゃセクハラですよ、これ。
それはさておき、この言葉は真実です。動物、こどもに対しても当てはまる言葉ですよ。そして芸事や仕事に関しても。才能や相性もあるかもしれないけど、大事なのは「無理せず、やさしく、根気よく」なのです。
その反対に、別れる時の心構えとしてはこんな言葉。
第22集「ニューヨーク散歩」
男は引き際だ。つらいのはわかるけど、一度女に飽きられたら、追いかけたってムダなんだよ。な、ニイさん。
こりゃあれだ、よく言われている「恋愛に関しては、男は「名前をつけて保存」、女は「上書き保存」である」というヤツですよ。
いやあ、これも真実ですね。わたしも痛いくらいに実感してます。何度この言葉を自分に言い聞かせたことか。。。この言葉をフジタではない、1回きりのキャラクターに言わせているところがニクイ。作品に深みが出ています。男子も女子も、この言葉、よく覚えておけよ。
特に女子!
お前たちが「上書き保存」するせいで、俺たちはどれだけ昔のことを引きずられてきたことか……って、まあ、「上書き保存」してくれたおかげで、あのとき付き合ってくれたのか。そう考えれば、悪くない性質かもね、「上書き保存」は。
以上、3つの言葉ですが、これってよく言われていることですよね。
飲み屋に行けば、絶対、毎日誰かが口にしているような。しかし、それを各話の中に説得力ある形で挿入し、成功しているのがすごい。細野先生、やっぱりお見事ですよ。
最後に、このようなクリシェな言葉をもうひとつだけ。
第8集「神々の宝石」(後編)
そうやって病にふせってショボくれてるときが、一番セクシーよ、フジタ。
「セクシー」という言葉をフェイツイがどういう意味で使っているかはよくわかりませんが、普段強そうに見える人が弱っている姿にグッと来る、というのはよくわかりますね。いわゆる「ギャップ萌え」なのでしょうが、「この人のこんな姿を知ってるのはわたしだけ!」という気持ちもあると思います。
以上、「男と女の格言編」でした。今日も皆さんが文化的な生活を送られることを。
この第8集は本当に名作です。タイトルにもなっている「真珠と少年」をはじめとして、名作ばかり。やはり『ギャラリーフェイク』第10集周辺はすばらしい。