『海街diary』が完結しましたね。わたしは単行本で読んでいましたので、この12月に最後まで読み切りました。爽やかで繊細なこの話、ここ数年は新刊の発売をずっと楽しみにしていた作品です。
わたしの吉田秋生先生との出会いは小学生のとき。
親が買ってきた『吉祥天女』は新鮮な驚きで、少し年上の世界を覗いているよう
同じくこの頃に親の好みで『日出処の天子』も読みました。今考えると、この時期にこの2作品に出会えたのは本当に幸運なことです。
『BANANA FISH』確固とした世界観は言うに及ばず、『櫻の園』や『ラヴァーズ・キス』のプロットの巧みさなど、吉田作品についてはいろいろ書いておきたいことがあるのですが、それはまた今度に。
とりあえず今日は『海街diary』。
『吉祥天女』と同じく、わたしが自分で買ってきたのではなく、妻が買ってきた本です。
このマンガの内容については、あの是枝監督によって映画化もされてますし、たくさんの人がたくさんのことを書かれていると思いますので、わたしが書き加えることなどありません。爽やかな読後感を大事にするだけです。
ただ、完結にあたって最初からすべてを読み返してみると、一箇所心に引っかかったシーンがありました。第2巻『真昼の月』の「真昼の月」、物語の中でも大事な転回点となる、シャチ姉の会話です。
と、4姉妹それぞれが、普段からずっとそこにあったのに気づかなかった「真昼の月」に気づいてこの話は終わります。うますぎる。巧みすぎますよ、吉田先生。
しかもこのシャチ姉の先輩、佳乃の高校生の恋人である藤井君の親族なんですよね。わかる人だけにわかる、重層的な仕掛けも施している、と。やりすぎですよ。
さて、わたしの心に引っかかったのは先輩の言葉、「この仕事してるとひっどい医者にいっぱい出くわすよね あんた医者に対してハードル低くなってない?」のところ。
どきりとしました。
これ、わたし言い訳にしてるところあるかもしれません。
「医者」を「税理士」に代えてみると、業界としてよくある話です。会計事務所職員は、自分のボス税理士や他事務所の税理士について「ひっどい税理士」の話を多々耳にしたことでしょう。登録前はそういう税理士を知るたびに、反面教師として「こういう税理士になるのはやめよう」と思っていました。
しかし、いざ自分が登録して税理士となって様々な判断や発言を求められてみると、なるほど、こういう状況だとそういう判断をしても仕方ないかな…と感じ、まあ、あの先生よりはマシだよ、ベストじゃなくてもベターな判断だった、なんて自分を慰めることもあります。
「おまえ、税理士に対してハードル低くなってない?」いまの自分に言ってやりたい言葉です。税理士という職業に強い憧れを抱いていたわけではありませんが、税理士だからこそできること、税理士という資格に世間が認めている信頼を忘れてはいけません。
自戒の言葉をいただきました。ありがとうございます。
海街diary(うみまちダイアリー)2 真昼の月(フラワーコミックス)
- 作者: 吉田秋生
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/10/10
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ところで、男たちで『海街diary』の話になると、決まって話題になるのは「で、お前だったら誰とつきあう?」というはなし。下世話な話で失礼します。みんな、大体4女のすずなんですが、わたしが、すずは中学生だし、彼女は多分自分を持ってる人間だから会える時間は多くないよ、と説明すると、みんなバラバラになります。この作品、男にはそういう楽しみ方もあります。『よつばと!』みたい。
わたし? わたしはもちろん幸ねえですよ。
ちなみに、吉祥天女の文庫版はこちら。これはこれで怖くていい雰囲気です。