漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

税務署職員による旅費の不正請求事件(大阪国税局管轄)

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「財務(ファイナンス)」「会計」「社会保険」「税金」。

人が生きていく上で避けて通ることのできない分野であるけど、なかなか学校では教えてもらうことの少ないこれらの分野を、わたしはそれぞれ英語の頭文字をとって「FAST分野」と呼んでいます。

このFAST分野、改正や汚職などがあったときは大きく新聞1面で取り扱われますが、日常的にもひっそりと定期的に取り上げられるものがあります。それは、脱税・税務調査による追徴、徴税サイドの行政職員の汚職などで、これらはFAST分野でありながらも、いわゆる「三面記事」として扱われています。

税理士は地味な仕事です。資格取得の難しさに比べて、他の資格職よりも知名度は低い。ある意味、「縁の下の力持ち」的な地味な仕事であるため、職業上それは当然のことかもしれません。しかし、その税理士が突然世間の注目を集めるときがあります。それはどんなときか―――汚職、不正行為などの法に触れたときです。

税理士登録時研修に言われたことです。

そしてこれは税務署などの行政側、公務員の方々にとっても同じこと。

そういう目で新聞を読むと、定期的にこれらの記事が掲載されていることに気づきます。今回もそういう記事のうちの一つです。

 

税務署職員が旅費不正請求「パチスロ代捻出で」
(読売新聞 2018年10月06日 08時45分)

 大阪国税局は5日、和歌山県内の税務署に勤務する上席国税調査官の男性職員(51)が、出張旅費の不正請求を200回以上繰り返していたなどとして、停職9か月の懲戒処分にした。職員は同日付で辞職した。
 発表では、男性職員は大阪府内の税務署で勤務していた2016年8月~18年1月、調査や打ち合わせと偽って架空の出張を申請したり、旅費を水増し請求したりする手口で、計237回分の旅費約90万円をだまし取ったとされる。

 国税職員の犯罪を捜査する国税庁監察官は5日、このうち175回分の約67万円の不正請求を裏付け、男性職員を詐欺容疑で大阪地検書類送検した。

 男性職員はこのほか、勤務時間中にパチンコ店に行ったり、飲酒したりしていたといい、調査に対し、「パチスロ代や飲酒代を捻出するために不正請求した」と説明しているという。

 

このような不正に関する記事を読むたび、いつも思うこと。

それは、「こんな状況になるまで、なんで誰も気づかなかったの?」ということです。

皆さんも同じではないでしょうか。職場の人間関係、性善説に基づいた周囲の判断など、さまざまな条件が関係するでしょう。不正・汚職は条件が整うと起きやすくなる――不正行為やヒューマンエラーに関する研究についてわたしが付け加えることはありません。わたしに興味があるのは、不正を起こしてしまった人よりも、不正が起きた時の状況です。

自分の教訓とするため、そのような環境に身を置かないよう、そしてそもそもそのような状況を生み出さないよう、注意したいと思います。

 

最後に、このエントリを書きながら気づいたこと。

この税務職員、辞職時は和歌山県内の税務署に勤務されていたようですが、不正行為を働いていたときは大阪府内の税務署に勤務されていたとのこと。しかしその具体的な税務署は書かれていません。そもそもその発表がなかったのか、取材者の判断で省いたのかはわかりませんが、結果的に納税者の具体的な批判をかわす形になっているような気もします。

ここで具体的な税務署名が挙がっていると、確定申告時期など、「あんたんとこの職員、不正しとったやろ! それに比べれば、こんなの小さいことやないか!」…といった、「おい、こら」言うのが得意な(©青木雄二)納税者には、格好の餌食となってしまうからです。

……ただ、このようにぼかすことによって、逆に「大阪国税局」管轄と範囲が薄く広がることになりそうな気もします。今回のエントリの題名もこれを意識しています。

 

押せば意外に 税務署なんて怖くない

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