漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

寺の墓地、国税が差し押さえ 税金滞納で異例の公売

これはありえない案件です。

と同時に、興味深い案件でもあり、今後続出する可能性もあるような。

 

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税金払えない 墓地公売

朝日新聞 5/28 )

 

名古屋市中区の繁華街・大須にあった古刹・久宝寺が税金の支払いを滞納したとして、名古屋国税局が寺が所有する墓地を差し押さえ、公売にかけたことがわかった。墓地の公売は極めて異例のことだ。

墓地公売、きっかけは住職の財テク 1年で7千万円失う

 国税局によると、公売にかけられた墓地は、名古屋市千種区平和公園内にある。面積は591平方メートルで、約50基の墓がある。

 公売の最低価格は6867万円。開札は26日の予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期された。新たな時期は未定だ。

 関係者によると、国税局は2017年、寺の税務調査を実施し、住職(72)が寺の資金約7千万円を個人的な投資に流用したことを確認。このうち約5千万円について、寺が住職に支払った臨時賞与とみなして源泉徴収漏れを認定した。

 重加算税の追徴課税もあったが、寺は約2260万円の支払いを滞納し、当時の財産は墓地だけで国税局が差し押さえた。その後、一部納付された。開札日までに全額納付すれば、差し押さえは解除される。

 国税徴収法は礼拝などに直接使う神体、神具、仏具などの差し押さえはできないが、本堂や庫裏は直接必要と認められず差し押さえができるとしている。墓地も不動産と同じで差し押さえができる。

 住職は取材に、「檀家(だんか)に申し訳ないのひとことだ」と話している。
 全国寺院名鑑によると、久宝寺は1556年に創建され、その後、清洲から大須に移転。住職らによれば、戦災で焼失後、3階建て建物を本堂と庫裏にしていた。

 


マンション・先物…糖質不義次失敗

 

きっかけは、住職が抱いた将来の経営不安だった。

 「檀家(だんか)は100軒ほど。人口減で減り、家族葬が増えて葬式も減っている。このままではお先真っ暗だ」

 住職は2012年、安定した収入を得るため、大須商店街の中心にあった寺を、本堂兼マンションに建て替えることを決めた。工事代金約4億9千万円で14年に完成。11階建て約30部屋、最上階に本堂を設けた。

 しかし、寺の資金繰りはすでに悪化していた。12年に寺の資金約7,000万円を株式先物取引に投じた。1年後に全額を失ったという。
 14年には、マンションの建設請負代金支払いをめぐり、建設会社から提訴された。寺は欠陥工事と主張したが、約1億2,400万円の支払いで和解した。
 これらの影響でマンションが差し押さえられ、家賃収入が入らなくなった。
 資金問題などから、寺は15年、宗派の曹洞宗を離脱。住職は寺の財産と私有マンションを不動産会社に売却した。
 寺の陶器は16年、本尊の阿弥陀如来像は19年、名古屋市千種区で別の寺が所有する木造平屋建て34㎡に移した。寺の財産と資材を失った住職もここで寝泊まりする。

 

檀家「何百年の付き合い でも墓ひきあげたい」

 

 一方、公売に出された墓地に墓がある檀家の男性(73)は「公売は、迷惑もいいところだ」と憤る。
 別の檀家の女性は「公売は知らなかった」と困惑しながら、「寺とは何百年の付き合いがあるがトラブル続きで檀家をおりたい。墓もひきあげたい」と話した。「家族葬にして、墓じまいにするつもりだ」と話す檀家もいる。
 墓地を管理する名古屋市環境薬務課の担当者によると、墓地の公売は前例がないという。墓地を新たに経営できるのは地方自治体、公益財団法人、宗教法人に限られる。永代使用は墓の所有者と寺の合意事項で、墓地の廃止には寺が廃止を申請し、市長の許可もいる。公売後、檀家は新たな経営者と話し合いが必要になる。

(村上潤治)

 

「墓ひきあげたい」って、そりゃそうだ。