「申告漏れ?」記事。今回はわりと詳細が明らかです。
ニチリンが4億円申告漏れ、所得隠し6千万円 国税指摘
朝日新聞 2019年 1/28東証2部上場の自動車用ホースメーカー「ニチリン」(本社・神戸市)が大阪国税局の税務調査を受け、2017年までの5年間で約4億1千万円の申告漏れを指摘されたことがわかった。うち約6千万円は重加算税の対象となる所得隠しと認定された。追徴税額は約1億6千万円で、すでに納付済みという。
関係者によると、所得隠しとされたのは、課税対象となる「資産」として計上された自社での「設備製作費」の一部。国税局は、同社が機械の製作にかかる賃金や加工時間を実際より低く計上することで、資産を少なくみせていたと判断したという。
このほか所得隠しと認定されなかったが、同社と子会社の間で出向する従業員の人件費などの分担について、同社の負担割合が多すぎるとの指摘もあったという。同社は「見解の相違があったが、指摘に従った」としている。
有価証券報告書や信用調査会社などによると、同社は国内外に15の子会社があり、17年12月期の連結売上高は約593億7千万円、経常利益は約86億円で、5期連続で最高益を更新した。自動車用ホースなどのゴム製品を製造し、特に二輪車用のブレーキホースでは国内シェアの大半を占めている。(大部俊哉)
「資産を少なくみせていたと判断した」というところがこの案件のキモですが、一般的にはこの表現はわかりにくいかもしれません。
「資産を少なくみせたらいけないの? でも、税金って利益にかかるんじゃないの?」
そのとおり。 でも惜しい。
ここで述べているのは、つまり「資産を少なくみせる」=「費用を多くみせる」ということです。機械などの高額で何年も使用する固定資産は、支出した年に一度に費用として計上するのではなく、それぞれに定められた耐用年数で費用を按分していきます。これが減価償却で、ニチリンはこれを適正に行わなかった、と。
案件自体はよくある話です。中小企業の税務調査でも、資本的支出とすべき修繕費なんてのは税務調査指摘項目の上位に入ります。この記事で興味深いのは、「みせていた」という表現。これは「所得隠しと認定された」というところと呼応していると思われます。
「申告漏れ」の場合は、追徴課税として、漏れていた所得の分の法人税・法人地方税と延滞税、諸々の加算税が課されて終わり。しかし、「所得隠し」、つまり意図的に所得を漏らしていたと判断された場合は「仮装隠蔽行為」を行ったとみなされて、重加算税が課されます。
このブログでも以前に書いたように、「申告漏れ」の幅は非常に広い。新聞で報道されるような企業で意図的に脱税をするようなのは実は極めて稀で、よく目にする「見解の相違があった」という表現がかなり事実に近いことが多いと思います。バンドの解散理由の「音楽性の相違」というのがわりと真実に近いのと同じです。
ただ、今回の記事はかなり細部が明らかだったのでしょう。小会社間との出向における人件費の割合云々はグレーゾーンが残る話でしょうが、設備製作費の問題は完全にアウト。これは申し開きできない、文字通り申し訳ない事態だったのでしょうね。
以上、記事の細かい表現から、細かい事情をうかがうことができるという話でした。
重加算税と税務調査―「隠ぺい・仮装」と「偽りその他不正の行為」の探求
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