漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

「仮想通貨」は「暗号資産」に。/泉佐野市は不服従。(朝日新聞 11/27 から)

新聞ネタが続きます。

今日は小ネタ2本。

小さい記事に関して気になった、小さなことについてです。

 

仮想通貨の呼び名「暗号資産」に? 金融庁が検討中
朝日新聞 11/26)
金融庁は26日、仮想通貨の呼び方を「暗号資産」に変える検討を始めた。相次いだ不正流出事件や相場の乱高下を受け、仮想通貨は円やドルなど法定通貨とは異なり、投機的に扱われる資産として規制する対象として位置づける。

 金融庁有識者会議「仮想通貨交換業等に関する研究会」に出した資料に方向性を示した。「国際的な動向を踏まえれば、法令上の呼称を『暗号資産』に変更する」ことを検討項目に加えた。交換業者に不適切な広告や勧誘を禁止することや、リスクの高い仮想通貨の取引を禁じることも検討項目に挙げた。金融庁は近く資金決済法や金融商品取引法を改正して仮想通貨への規制を強化する方針で、あわせて呼び方を変えることを検討する。

 金融庁は、ネット上で扱われる仮想通貨が金融とITを組み合わせた「フィンテック」での技術革新につながるとみて、2017年施行の資金決済法で決済手段として位置づけた。法令上も「仮想通貨」の用語を使ってきた。しかし今年1月、仮想通貨交換業者コインチェックで約580億円分の不正流出が起き、交換業者のずさんな経営実態が明らかになった。金融庁は仮想通貨業界の育成から厳格な監督にかじを切った。国際的にも仮想通貨が犯罪組織のマネーロンダリング資金洗浄)などに使われる懸念が強まり、主要20カ国・地域(G20)は3月、国際的な規制強化で合意していた。(山口博敬)

 

これ、実はわたしもずっと気になっていたんですよ。一般的に、英語圏では仮想通貨は「cryptocurrency」という言葉で表示されます。正確にこの言葉を訳すなら、「暗号通貨」になるのではないか、と。「cryptocurrency」を「仮想通貨」という訳語にしたところに金融庁の悪意を感じていました。つまり、「われわれが管理していないものは「仮想」にすぎず、実体が存在しているとみなすことはできない」、と。

ここにきて「暗号資産」と呼称を変更したところをみると、この業界が自分たちの管理下にあることを確認できたのでしょう。とりあえず、多くの人にとって望ましい状況になったと思います。

 

さて、次はもはや年末の風物詩となったふるさと納税について。

泉佐野市、つっぱりますね。

 

 

国とバチバチ泉佐野「排除でも考え貫く」 ふるさと納税
朝日新聞 11/27)
 ふるさと納税総務省が「過度」「地場産品でない」返礼品の見直しを求めている問題で、納税額首位の大阪府泉佐野市の千代松大耕(ちよまつひろやす)市長が27日、「地方の努力を踏みにじり、地方分権の流れに逆行している。今は(市の)考え方を貫き通したい」と述べ、従わない姿勢を示した。国は応じない自治体を制度から外す法改正も検討しているが、千代松市長は「排除されてもしかたない」とした。

 この日の定例会見で記者団の質問に答えた。

 同市への納税額は昨年度135億円。市域の関西空港に拠点を置く航空会社で利用できるポイントなどが人気を集めている。

 市は「ルールは国が独断で決めるものではない」とし、返礼品を寄付額の3割以下とする根拠などを示すよう総務省に要求しているが、回答はないという。(加戸靖史)

 

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千代松 大耕 泉佐野市長

地域経済の活性化、地方自治体の自助努力を促す試みであり、一定の成果が出ていることは評価すべきだと思います。しかし一方で、特産品レースになってしまい、その地域の自然・文化環境によってはそもそもこのレースに参加できない地方自治体間の不公平や、国と地方の税収のあるべきバランスに関する議論の不十分さについては、まだまだ議論を重ねる余地があると思っっています。つまり、わたしは考えがまとまっていません。

ふるさと納税自体、まだまだ議論の途上にある制度なのでしょう。そこのところは上の記事の「暗号資産」に似ています。

 

一点だけ、気になったところを指摘させてください。

「同市への納税額は昨年度135億円」とありますが、この「納税額」は誤解を招く表現です。というか、端的に誤りです。これは「寄附額」とすべきです。泉佐野市に寄附をされた方は、気分的には泉佐野市に住民税を納めた感覚かもしれませんが、制度としては「寄附」をしたのであり、その結果、自分の住む地方自治体へ納めるべき住民税が減額された、という形になります。

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つまり、自分の住む地方自治体に住民税を納める代わりに、寄附をして特産品をもらったわけです。公立図書館や公立の保育所などの地方自治体の公共サービスを利用している人は、この点を少し考えてみてください。わたしが考える問題点の一つです。

あ、ふるさと納税は自分の住む自治体にもできますよ。正確に述べると、自分の住む自治体に寄附をして特産品をもらい、住民税の控除を受けることもできます。本当にややこしい制度ですよね。

 

H28年度の結果はこちらの記事を参考にしました。

H29年度はこちら。

 

暗号通貨最前線 初心者でもわかるフィンテック入門(信長出版)

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ふるさと納税の理論と実践 (地方創生シリーズ)

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