漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

徳井さんの税金無申告について。 『税務通信』「所得漏れ・所得隠し・脱税の違い(税務通信 No.3584 「ショウ・ウインドゥ」)」を参考に

専門誌「税務通信」では、「ショウ・ウインドウ」はコラムというか、箸休め的な位置づけ。しかしその分、専門家以外の一般的な読者が知りたい内容だったりします。

今回の記事なんか、その最たるものですよね。

 

 

所得漏れ・所得隠し・脱税の違い

有名お笑い芸人による税金の無申告問題が世間を騒がせた。一連の報道で「所得隠し」や「脱税」という言葉を見かける機会が増えたが、それぞれの言葉が意味するところ、法令上の解釈にはどのような違いがあるか。

世間的には、「所得漏れ」、「所得隠し」、「脱税」という3つの区分で議論されることが多いが、この区分は法令上、正確でない。そもそも「所得隠し」という言葉は条文の規定にない、いわゆる「マスコミ用語」と呼ばれるものだ。それぞれの言葉が意味するところを区分するのであれば、

「①過少申告加算税の対象(=所得漏れ)」

「②重加算税の対象(=所得隠し)」という課税処分の区分と、

「③告発の対象(=脱税)」という刑罰を求める区分に分けられる。つまり、課税を目的にしたもの(①②)と、罰則の適用を目的にしたもの(③)だ。

それぞれの線引きには、どのような基準があるか。①と②の場合、悪質性や故意性等が考えられるようだ。例えば、①に関する規定では「…修正申告書の提出又は更正があつたとき…」( 通法65 ①)とされ、その「故意性」を明確に示しているわけではない。ただ、②に関する規定では「…課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽…又は仮装したところに基づき…」( 通法68 ①)とあるように、隠蔽や仮装という「故意性」にまで触れている。これが両者の違いだろう。

②と③の場合、対象事案の規模などが、境界線としてあるようだ。具体的な基準は不明だが、査察の目的は調査をして各税法の罰則規定を根拠に告発することであるため、「[A]悪質性」、「[B]脱税の規模」、「[C]刑事立証のための証拠収集の程度」等を総合的に勘案し、告発するか否かを検察庁と協議しているという。これまでの告発事案についても、こうした要件に基づき判断がされているようだ。

 

この「有名お笑い芸人」とは、チュートリアル徳井義実さんのことですよね、もちろん。

 

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この記者会見のファッション、謝罪会見としては悪くないです。が、それが成功しすぎて、ひどく地味なような。

 

ざっと検索してみると、この件については「税金逃れ」「税金無申告」「申告漏れ」と表現しているところが多いようです。

実は、マスコミは注意深く言葉を選んでいる姿勢がうかがえます。

少なくとも、はっきりと「脱税」という表現をしているものは少ない(個人ブログなどではよく目にしますが)。

①~③については、実務的な表現で、これらの言葉を注意深く避けていることがわかります。強いて挙げるなら…と、一番やわらかい「申告漏れ」という言葉を使っている。

 

「逃れ」はやや意図的なニュアンス、「無申告」はどちらとも取れる、「漏れ」は当方はきちんとしようと考えていたけど意図せず(不注意で)ミスがあった…というニュアンスでしょうか。

 

個人的には、ずいぶん徳井さんに好意的だな、と感じました。もしもこれが敵が多い方だったら、もっとキツイ言葉で批難されていたのではないか、とも。

 

これくらいで済んだところが、徳井さんの人徳かもしれません。

 

ただ、この「申告漏れ」は言語道断です。

復帰がどうなるのか、見当がつきません。