漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

2018年の映画。『未来のミライ』、そして「One Cut of The Dead」!

この季節になると、どうしても一年を振り返りたくなります。

今年は大きく動いた年で、うれしいことも、悲しいこともありました。今日は、ふと目にしたこの新聞記事に触発されて、備忘録代わりに映画のことを書いておきましょう。

 

 

わたしのシネマ大賞2018 (オトナになった女子たちへ 益田ミリ
朝日新聞 12月7日)
  

 あっという間にシネマ大賞の季節だ。今年観た映画ナンバーワンを決定するのだが、湯船につかりながら一人で開催する、めちゃくちゃ個人的なものである。

 映画は映画館で観ている。理由がある。家だとおやつをあさりに冷蔵庫へ行ったり来たり……。集中できぬゆえの映画館通いだ。今年は約50本。ふらりと観たいからマスコミ試写会には行ってない。

 映画館のポップコーンが好きだ。カップにあふれんばかりに入っている。それを無造作につかんで口に放り込むときの、投げやりな自分も好きなのだ。人って、たまには投げやりになりたいのではないか。ポップコーンを食べながらいつも思う。

 さてさて、今年の映画である。前半に観たものは、どうしても印象が薄らいでくる。

 薄らがなかったのは「ラッキー」という映画。主人公のラッキーは、90歳、一人暮らし。馴染みのバーで、彼はご近所さんたちと会う。事件は起こらない。ラッキーの日常を淡々と描いた物語だ。

 ラッキーの友人役に、映画監督のデビッド・リンチが出演している。彼が、飼っている亀について語るシーンがある。ただそれだけなのに、わたしは一回ぽっきりの自分の人生を思って泣けてきた。

 新人監督も観た。話題作の「カメラを止めるな!」。小島淳二監督の「形のない骨」。ジャンルにはこだわらない。ド派手なやつも観る。インド映画「バーフバリ 王の凱旋」は、ゴージャスさのあまり2回観た。2回観たといえば、伝説のバンド、クイーンの軌跡を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」。以来、クイーンの曲を聴き、やっぱりええなぁと、うっとりしている。映画を観るまで彼らのことを知らなかった身ではありますが……。

 そんな中(湯船の中でもある)、わたしの今年のシネマ大賞は「悲しみに、こんにちは」というスペイン映画に決定した。両親を亡くし、叔父夫婦に引き取られた少女の物語である。彼女は悲しくても泣かない。泣けないのだ。終盤、なにげない幸せの中、ふいに過去に存在した温かな日々がよみがえり、彼女は泣いた。すてきな映画だった。(イラストレーター)

 益田さん、いいなあ。年間50本かあ。年に50本といえば、大体1週間に1本観ている計算になります。週に1回、映画館…! 実にうらやましい。

わたしは、学生時代をまだまだ映画館の多かった京都で過ごしました。インターネットもまだインフラになってなかった時代、毎週発行される「ぴあ」をみながら映画館に足を運びました。シネフィルを気取って1日1本は映画を見ていた時期もあったなあ。

その頃の自分が今のわたしを知ったらなんと言うでしょう。今年は劇場で1本、家では10本程度。…これでも頑張りました。人間は変化していくものなので、今年はこういう季節だったのでしょう。そもそも「頑張った」という表現がおかしい。わたしの中で、映画は依然として大事な場所にあるものの、他にそれよりも優先順位が高いものが出来てしまったのです。

さて、この記事。

『ラッキー』『形のない骨』『バーフバリ 王の凱旋』『ボヘミアン・ラプソディ』『悲しみに、こんにちは』…どれも面白そうじゃないですか。特に気になったのは『ラッキー』。これ、主人公ハリー・ディーンスタントンじゃないですか! これ、遺作なんですね……デヴィッド・リンチが出てるのも納得。

主人公のラッキーは、90歳、一人暮らし。馴染みのバーで、彼はご近所さんたちと会う。事件は起こらない。ラッキーの日常を淡々と描いた物語だ。

これをハリー・ディーンスタントンがやっている、というだけで、この映画はいいモノに決まってます。DVDも出てるみたいだし、年末年始に時間作って必ず観ます。

 

ラッキー [DVD]

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そしてハリー・ディーンスタントンの死亡記事も備忘として。

 

代表作、『エイリアン』『ツイン・ピークス』って…。この記事を書いた人は映画が好きじゃない人だ。ハリー・ディーンスタントンの代表作なら、『パリ・テキサス』でしょ。

 

そして、この記事を読んで、話題になってから今年ずっと観たかった『カメラを止めるな!』をDVDで観ました。これ、期待を裏切らずおもしろかったです!

 

 

映画でも音楽でもなんでも、とにかくメイキング、制作裏話が好きです。その意味で、この映画はサイコー。はじめワイルドにみえて、恐ろしく緻密な台本も素晴らしい。さすが、『お米とおっぱい』なんて『12人の怒れる男』、『12人の優しい日本人』リスペクトな(そして『キサラギ』に背中を押された)作品を撮った監督だけあります。 

ヒット作品の業として、どうしてもその映画の情報が耳に入ってしまった状態でみましたが、それでも素晴らしい! 素晴らしい映画です。well-made な脚本だな、とは「みなさんに共通する感想でしょうが、わたしは「共同製作」の喜びを感じました。「みんなでつくる」ことの喜びに溢れた映画です。三谷幸喜のベスト作品(とわたしが勝手に考えている)『王様のレストラン』の「奇跡の夜」と感触が似た作品です。

 

でも、一番大きかったのは「家族愛」。やっぱり家族っておもしろいなあ。この映画で発見した、家族の新要素。それは、いつも一緒にいるくせに絶対わからないことがあるところ、不確定要素ががあるところです。なるほどねえ。

あと、最後の、まんま「I want you back」な「Keep Rolling」もよかったですよ。これ、サントラは出てないのでしょうか。配信販売はあるみたいですが。

Keep Rolling (映画『カメラを止めるな!』主題歌) [feat. 山本真由美]

Keep Rolling (映画『カメラを止めるな!』主題歌) [feat. 山本真由美]

 

『サイタマノラッパー』を観たときと同じ感覚でした。上田監督、ありがとう。少し疎遠だった学生時代の友人に連絡とってみます。

今年もまだ2週間あります。家族や友人、知人をだまして『ボヘミアン・ラプソディ』観にいこうかな。

ちなみに、今年劇場で観た1本は、細田守監督の『未来のミライ』。前作『バケモノの子』はメタファーを多用した、少し「頭でっかち」な作品でしたが、『未来のミライ』はそれが昇華された神話的な作品。小学生の娘といっしょに楽しみました。