ラ・ロシュフーコー、派手さはありませんが、いま読むといいですよ。
ニーチェの元ネタでもある思想家です。
智は、いつも、情に一ぱい食わされる。
(ラ・ロシュフコー)
人がなす推論や判断は、期待や恐怖、自愛や憎悪といった感情に知らぬまにバイアスをかけられ、あらぬ方向に向かう。希望的観測というのはその典型だ。知性はたわみやすいものなのだ。だからだろう、知性は自らに明確な根拠や厳密な方法を課してきた。推論や判断は、性急にではなく丹念に、そして注意深くと。17世紀フランスの公爵の『箴言と考察』(内藤濯(あろう)訳)から。
(鷲田清一)
鷲田先生はずいぶん渋い訳を引かれていますね。 ご自身の手元にあるものを挙げられたのでしょう。
わたしの本棚にあるのはこれです。
そして原文はこれ。
L'esprit est toujours la dupe du cœur.
寸鉄、人をさす。
箴言、アフォリズムは、細かい説明を省略して言い切ったその余韻に素晴らしさがあります。その意味は読者がおのおの考えよ、と。
この言葉もまさにそれです。
「精神は心のだまし討ちである。だから精神は不完全なのか、それとも心の働きが加わることで味わい深いものになるのか。それはお前が考えろ。」
今年のまとめ、というよりも来年に持っていく言葉として心に刻んでおきます。
余談ですが、新しい外国語を学ぶときは、対訳で読むと語学学習の能率が上がります。
このラ・ロシュフーコーは、仏英の対訳で読んだりするといいですよ。
この部分の英語訳はこれ。
The mind is always the dupe of the heart.
なんだ、フランス語って英語と似てるなあ、とか、知らなかったフランス語の単語の意味が英語からの類推で頭に入ってくるんです。
この学習法、オススメですよ。
Réflexions ou sentences et maximes morales (French Edition)
- 作者:François duc de La Rochefoucauld
- 発売日: 2011/03/30
- メディア: Kindle版
Reflections; or Sentences and Moral Maxims (English Edition)
- 作者:François duc de La Rochefoucauld
- 発売日: 2012/05/12
- メディア: Kindle版