漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

ラ・ロシュフーコー「智は心のだまし討ち」。―朝日新聞、鷲田先生の折々の言葉から。

ラ・ロシュフーコー、派手さはありませんが、いま読むといいですよ。

ニーチェの元ネタでもある思想家です。

 

 

智は、いつも、情に一ぱい食わされる。 

ラ・ロシュフコー) 

人がなす推論や判断は、期待や恐怖、自愛や憎悪といった感情に知らぬまにバイアスをかけられ、あらぬ方向に向かう。希望的観測というのはその典型だ。知性はたわみやすいものなのだ。だからだろう、知性は自らに明確な根拠や厳密な方法を課してきた。推論や判断は、性急にではなく丹念に、そして注意深くと。17世紀フランスの公爵の『箴言と考察』(内藤濯(あろう)訳)から。

鷲田清一

 

箴言と考察

箴言と考察

 

 

鷲田先生はずいぶん渋い訳を引かれていますね。 ご自身の手元にあるものを挙げられたのでしょう。

わたしの本棚にあるのはこれです。

ラ・ロシュフコー箴言集 (岩波文庫 赤510-1)

ラ・ロシュフコー箴言集 (岩波文庫 赤510-1)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/12/18
  • メディア: 文庫
 

 

そして原文はこれ。

 

L'esprit est toujours la dupe du cœur.

 

Maximes et Réflexions morale (French Edition)

Maximes et Réflexions morale (French Edition)

 

 

寸鉄、人をさす。

箴言アフォリズムは、細かい説明を省略して言い切ったその余韻に素晴らしさがあります。その意味は読者がおのおの考えよ、と。

この言葉もまさにそれです。

「精神は心のだまし討ちである。だから精神は不完全なのか、それとも心の働きが加わることで味わい深いものになるのか。それはお前が考えろ。」

 

今年のまとめ、というよりも来年に持っていく言葉として心に刻んでおきます。 

 

余談ですが、新しい外国語を学ぶときは、対訳で読むと語学学習の能率が上がります。

このラ・ロシュフーコーは、仏英の対訳で読んだりするといいですよ。

この部分の英語訳はこれ。

The mind is always the dupe of the heart.

なんだ、フランス語って英語と似てるなあ、とか、知らなかったフランス語の単語の意味が英語からの類推で頭に入ってくるんです。

この学習法、オススメですよ。