漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

平成31年度税制改正に向けて。(1)

文化系税理士の佐藤です。

みなさん、また憂鬱な季節になりましたね…。

そう、税制改正の季節です!

今年はバタバタしておりまして、チェックを始めたのは以下の朝日新聞の記事から。最終的にどうなるかは別にして、どのような意見が出たのか、そしてどのような流れで決まって行ったのかを追うことは勉強になるんです。

定期的に購読しているのは朝日新聞と税務通信でして、この2つを中心にレポートしていきたいと思います。

さて、この朝日新聞の記事です。ほどよく「朝日節」が効いた内容になっていますね。太字は引用者によるものです。

 

 

金融所得の増税見送りへ 株価への影響考慮 政府・与党
朝日新聞 2018年10月31日 朝刊)

 株式の配当などの金融所得への課税について、政府・与党は来年度の税制改正での増税を見送る方針を固めた。現状では、金融資産の多い富裕層ほど所得税の実質的な負担が軽くなることが課題になっていたが、株価への影響などを考えて見送ることにした。

 所得税は現在、所得が多いほど税負担が重くなるよう、所得に応じて5~45%の7段階の税率が適用されている。しかし、株式の配当や売却益といった金融所得は、ほかの所得と分けて税額を計算することになっており、税率は一律20%に抑えられている。このため、合計所得に占める所得税の負担割合は、所得1億円を境に富裕層ほど軽くなり、「格差の拡大につながる」と指摘されてきた。

 政府・与党は昨年末にまとめた税制改正で、高所得の会社員らへの所得増税を決めた際、金融所得課税の見直しを今後の課題に挙げ、与党税制改正大綱に「税負担の公平性を担保する観点から総合的に検討する」と明記していた。
 
 来年10月の消費増税と同時に導入する軽減税率の財源に充てるため、財務省は一時、金融所得課税の強化を検討した。しかし、株価を重視する首相官邸は当初から反対の意向が強く、来年の統一地方選参院選を控え、与党内でも反対論が強まった。低所得者ほど負担が重くなる消費税を増税する一方で、富裕層への課税強化を見送ることには、税の公平性の観点から批判も出そうだ。伊藤舞虹)

 

う~ん…。

実務家としては歓迎、しかし思想的には必ずしも納得できる内容ではなく、やはり税制は政治の駆け引きの道具であることを示した内容、といったところでしょうか。実務家としては、まず、おそろしくややこしい金融所得課税が、とりあえず改正なしの方針なのはうれしいことです。ただ、やっぱり思想的には問題ですよね、今に始まったことではありませんが。NISAもアベノミクスのうちの一つですし、安倍首相は一貫しています。その意味ではブレていない。「政治家」と呼ぶにやぶさかではありません。

 

記事自体は非常に内容がクリアな文章で、達意の文章であり、一読して感心しました。「?」と首を傾げることも少なくない税制関係の記事ですが、この記事は限られた文字数でありながら背景も説明し、間違いも無く説明できています。素晴らしい。朝日の税制改正の担当記者は伊藤舞虹さんらしいですね。ネットの風評をみると批判もあるようですが、「朝日節」の効いた今後の記事、期待しています。

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