漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

「ふるさと納税」一考察(『税理士界』第1371号 (日本税理士会連合会発行 H30 12/15号))

昨日までは『近畿税理士会』でしたが、今日は『税理士界』です。こちらは全国紙。日本税理士会連合会が発行する業界紙です。

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こちらの「源流」に、ふるさと納税についての震源があったので、備忘として引いておきます。冒頭、ちょっと信じられない内容です。

 

ふるさと納税」一考察(『税理士界』第1371号 (日本税理士会連合会発行 H30 12/15号))

 過日、都内複数の税理士事務所に対し、顧客にふるさと納税を勧奨して誘導することができれば紹介料を支払う旨のダイレクトメールが届いた。新手の詐欺かと騒ぎになったが、税収増を図りたい地方自治体が発送したようである。税務の専門家としてふるさと納税制度の説明を行うことに異論はないが、あたかも税理士をふるさと納税サイトと同視するような地方自治体の対応に大変驚いた。

 この制度が創設されて10年。報道されている通り、返礼品競争が過熱して返礼割合が過大となったり、その地域の特産品ではない品物を返礼品とする等の問題が発生し、政府が制度趣旨に沿わない自治体を税制優遇の対象外とする意向を示す事態となっている。一方、都市部の自治体では、巨額の税源が流出して行政サービスの低下が懸念されるなど、制度のひずみが噴出している状況である。

 総務省ふるさと納税ポータルサイトによると、ふるさと納税の意義の一つに「納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度であること。それは、税に対する意識が高まり、納税の大切さを自分ごととしてとらえる貴重な機会となります」とある。この制度が本来の趣旨に沿って正しく利用されていれば、日税連の租税教育等基本指針の目的にある「申告納税制度の理念や納税者の権利及び義務を理解し、社会の構成員としての正しい判断力と健全な納税者意識を持つ国民を育成する」に通じるところもあったと考える。
 また、日税連の平成30年度税制改正に関する建議書では、ふるさと納税制度に関し、①税源格差の是正は税源移譲による偏在性の少ない税源の確保、地方交付税の充実などによるべきである 

②利用者の多くは返礼品目当てであって、寄附文化をないがしろにするとの指摘もある 

高所得者に有利で不公平な制度である――との理由から、本来の寄附制度となるよう見直すべきと建議している。
 不適切な制度利用に間接的に巻き込まれそうになった今回の騒動で、税理士会としては本来の趣旨に沿った寄附制度への早急な見直しを訴えていかなければならないとの思いを強くした。加えて、税理士法1条にある通り、我々税理士は「税務に関する専門家として、独立した公正な立場」にあり、あっせんを依頼するべき存在ではないことを、今般の地方自治体職貝を含めた社会の各層に浸透させる施策も講じていかなければならないことも感じさせる一件であった。       (西村新)

 

わたしも「大変驚きました」。まさか、地方自治体が自ら税理士にあっせんを依頼するなんて…。もちろん違法ではありませんし、問題視、というのも言い過ぎなのかもしれません。しかし、不自然なことであるのは間違いありません。

税理士会による、ふるさと納税制度についての建議は簡潔にして明快。わたしも全く同意見です。

①税源格差の是正は税源移譲による偏在性の少ない税源の確保、地方交付税の充実などによるべきである 

②利用者の多くは返礼品目当てであって、寄附文化をないがしろにするとの指摘もある 

高所得者に有利で不公平な制度である

 以前、このブログでも泉佐野市と総務省の対立について取り上げました。今後もこの動向に注意していきたいと思います。

 

 

税理士が自ら実践する! ふるさと納税の上手な活用法: H27年税制改正対応版

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