漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

Love Goes Marching On。佐山雅弘氏 死去に寄せて。

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ジャズ・ピアニスト 佐山雅弘氏が亡くなりました。

死亡日時は平成30年11月14日 午後0時10分、死因は胃がんだそうです。

 

マイルスが亡くなった年にジャズを聴き始めたわたしには、ジャズとは遡って聴く音楽でした。個人的にこの音楽への関心・愛情が高まるも、その翌々年にガレスピーも亡くなるなど、ジャズ界の衰退は否定できない傾向。

そんな中で、わたしはPONTA BOXのデビューを知りました。佐山さんを知ったのはこのバンドです。ージャズは遠い国の昔の音楽でなく、日本の現在進行形の音楽である。村田陽一氏のSolid Brass と並んで、PONTA BOXは長い間わたしの守護神のひとりでした。

 

PONTA BOX

PONTA BOX

 

 

3人全員が暴れているように聞こえますが、実は一番暴れているのはピアノ。好きなことしているように見えて、ベースとドラムは必死にまとめているという構図。「ポンタさん、人間的にはちょっとアレだけど、音楽的にはすごい優しいよね」どこかで佐山さんはそんなことを語られていたと思います。

そうそう、この時期は『JAZZ LIFE』を毎号購読していて隅から隅まで熟読していた時期で、佐山さんのインタビューもよく読みました。愛嬌のある言動、よくポンタさんにネタにされていましたね。

ごめんなさい、佐山さんの活動が幅広いのは重々承知ですが、わたしにとっては佐山さんは PONTA BOX なのです。特に初めの3枚。この3枚は浪人時代、そしてジャズをやり始めた時期に繰り返し繰り返し繰り返し聴いた音楽なのです。

ポンタボックスを研究することとジャズ、音楽を研究するのが同義でした。大西順子さんは仲間たちとブランフォード・マルサリスの『Dark Keys』を研究されたらしいですが、わたしはPONTA BOX が当時の音楽の教科書でした。

特に『PONTA BOX II』。 

これを90年代ジャズの傑作と呼ぶことに、わたしはなんのためらいもありません。いや、ポンタ氏は「ジャズじゃなくてポップログレッシヴ・ジャズだろ!」と仰るかもしれませんが。

 

II?Dessert in the Desert

II?Dessert in the Desert

 

「sandwitch 3-2-3」、どうしてみんな カバーしないんですか?

コンセプト・アルバムとしても、当時のチック・コリアの『タイム・ワープ』と同等以上の出来。

 

そして3枚めである『Live at Monrreux Jazz Festival』。

ここでの佐山さん、1番乱れていますね。「うお~、フレーズが後から後から溢れてくるんですわ~」とばかりのメロディアスなフレーズの連発。そして、それをポンタさんと水野さんが「わかった、わかったから少し落ち着け!」と整流してグルーヴを増幅。そういう、少し乱れてるところも大好きです。

そしてこのライブは選曲もいい。60年代マイルスのキャッチーな料理法もさすがですが、やはり「Love Goes Marching On」。

マイルスでも、自分が書いた曲でもなく、佐山さんの曲をエンディングに持ってくるところ、ポンタさんの懐の深さを感じます。

「おいおい、何十年前に作った曲だよ・・・」。佐山さんはそう苦笑いされるかもしれませんが、この曲は名曲ですよ、本当に素晴らしい。

 

ライヴ・アット・モントルー・ジャズ

ライヴ・アット・モントルー・ジャズ

 

 

最後に、ひとつだけ蛇足な話を。

これはもっと昔の話ですが、和田誠監督の『真夜中まで』にも出演されてましたね。
確か、映画のラストシーン近くのジャズ演奏シーンでピアノを弾かれていたと思います。豪快に後ろを振り返った瞬間、一発でわかりました。「あっ! 佐山さんだ!」って。あのシーン、嬉しかったなあ。ごめんなさい、カッコいいとかじゃないんですけど、本当に愛嬌がある仕草に、ちょっと笑っちゃいました。

 

 

真夜中まで [DVD]

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近年はすごい多作だったことも存じています。それもあり、ポンタボックスを離れてしまった後はわたしは佐山さんのあまりいいリスナーではありませんでした。なので、驚きましたよ、最近の写真を知って。ピアノを前にして佇んでるお姿、なんかシュッとしててまるでイッセー尾形さんみたいじゃないですか! でも、これもご病気のせいだったのかもしれませんね、こんなにスッキリしておられるのは。

 

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ただ、この記事の佐山さんの写真は、朝日新聞にも使われていたこの若い時代のものにさせてください。佐山さんからしたら不本意かもしれませんが、わたしにとっての佐山さんはこのイメージです。歯をむき出して笑いながら豪快にメロディアスなフレーズを連発。朝日新聞の担当の方も、そう考えてこの写真を選ばれたのではないでしょうか。

 

ご冥福をお祈りします。素晴らしい音楽をありがとうございました。

Love Goes Marching On。

まさに。