漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

平成31年度税制改正に向けて。(3)

税制改正の動向の続きです。

 

 

今回はある政党の税調の意見表明みたいなもの。

記事に税調(=税制調査会)とありますが、当然のことながら政府税制調査会ではありません。公明党の税調です。

 

住宅ローン減税、延長検討 公明党税調会長、15年軸に

朝日新聞、2018年11月3日 朝刊)

公明党の西田実仁・税制調査会長が2日、朝日新聞などのインタビューに応じた。来年10月の消費増税の対策として、住宅ローン減税の控除期間をいまの10年から15年程度まで延長することや、自動車の購入を後押しする補助金の創設を検討する考えを示した。来年度の与党税制改正大綱への反映をめざす。

西田氏は、増税で住宅購入時の負担も増えるとし、「住宅ローン控除を延ばすことで、中間所得層くらいまで税負担を補うことができるので、ぜひ検討したい」と発言。現行制度では借入残高に応じて所得税から年最大50万円を10年間控除できる。西田氏は延長期間について、年収1千万円未満の人を念頭に「(控除期間を)15年にすれば、(消費増税による)2%の負担増を超える」と述べ、15年を軸に検討する考えを示した。

自動車については、一部のエコカーはすでに免税されているため、購入を後押しするには「予算もやらなければいけない」とし、補助金が必要だとした。(伊藤舞虹)

 

西田税制調査会長のこのお言葉、いくつか補足が必要ではないでしょうか。

まず、現行の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、確かに「年最大50万円を10年間控除」できますが、まるまるこの500万円の税額控除を受ける人はまずいません。住宅ローン控除による税額控除額は住宅ローンの年末残高の1%です。なので、最大の50万円の控除を受けるには、年末残高が5,000万円必要です。ローンは少しずつ返済していきますので、10年間毎年50万円控除を受けるには、10年間ローンを返済し続けてもまだ残高が5,000万円以上残っている、ということ。

なので、住宅ローン控除について「最大500万円の税額控除!」とはよく耳にする惹句ですが、あまり現実的な金額ではありませんよね。

さらに、この50万円というのは、「長期優良住宅」や「低炭素住宅」とされる「認定住宅」の新築取得の場合だけです。認定住宅でも、中古取得は適用対象外。認定住宅の新築取得以外は、年末のローン残高 4,000万円の1%である40万円が限度です。

もっとも、西田公明党税調会長も以上のことは重々承知のことだと存じます。その証拠に、主張しているのは「金額の増額」ではなく「期間の延長」。たしかに、住宅ローンをスパッと10年で返済し終える世帯は多くないと思いますので、その意味で消費者・納税者の負担を減らすことになると思います。以上に加えて「自動車購入のための補助金の創設」を検討中ということで、有権者・支持者へのアピールを考慮した発表と言えるのではないでしょうか。

ただ、そうなると今度は政府の財源をどう確保するか、ということが問題になると思います。今後の公明党の発表に期待したいと思います。

 

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