漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

英、デジタル課税導入へ(朝日新聞 10/20から)

少し前の記事ですが…興味深い記事を見つけました。

「デジタル課税」ってなんですか?

英、デジタル課税導入の方針 グーグルやFBなど対象か

朝日新聞 10月30日 朝刊)

英国のハモンド財務相は29日の予算方針演説で、大手IT企業を対象に、英国の消費者向けのデジタル事業で得た収入に課税する「デジタルサービス税」を2020年4月から導入すると発表した。拠点を置かずにネットを使ってサービスを提供するIT企業の事業にどう税金を課すかは国際的な課題になっている。財務省によると、導入すれば主要7カ国(G7)では初めてになる。

 英国が課税対象にするのは、対象となるデジタル事業の世界売上高が5億ポンド(約720億円)以上のIT企業。検索エンジンソーシャルメディア、オンライン市場を運営する企業を想定しており、米グーグルや米フェイスブックなどが対象になるとみられる。英国の消費者向けの広告収入や、英国の利用者同士の取引で得たオンライン市場の手数料など、特定事業の一定規模の収入に2%の税率を課す。年間4億ポンド以上の税収を見込んでいる。

 国際的に展開する大手IT企業への課税対策をめぐっては、主要20カ国・地域(G20)や経済協力開発機構OECD)で議論しているが、米国などは慎重で対応が遅れている。ハモンド氏は演説で「(デジタル経済は)我々の税制の持続可能性や公平性にとって現実の課題をもたらしている」として、対応を急ぐ考えを示した。

 IT企業への規制を強める欧州連合EU)の欧州委員会も3月、EU域内に拠点がなくてもデジタル事業の売上高が一定規模以上のIT企業に、消費国の売り上げに応じて課税する案を提案。EU各国の財務相は年末までの合意を目指している。

 一方、ハモンド氏は今後の予算編成方針について、国営の医療制度「英国民保健サービス(NHS)」などの予算を増額する方針を発表。英国は金融危機後に財政が悪化して10年以降、緊縮策を続けてきたが、財政状況が改善してきたとして「緊縮の時代は終わりを迎える」と述べた。

 ただ、予算編成方針は、来年3月に控えるEUからの離脱がスムーズに進むとの前提でつくったものだ。現実にはEUとの離脱交渉は難航し、英与党内でもメイ政権への反発の声が強まっている。離脱がスムーズに進めば緊縮策を終えるシナリオを打ち出すことで、政権のEU離脱方針に反対する与党内の強硬離脱派を懐柔するねらいもありそうだ。
(ロンドン=寺西和男)

太字は佐藤による強調、下線部はデジタル記事にのみ掲載されていた部分です。  

まだ立法論の段階のようですし、報道段階なのではっきりとしたことはわかりませんが、法人の事業所得を課税対象とする税目のようですね(個人も対象となるのでしょうが、規模を考えると現実的ではないと思います)。

「ダブルアイリッシュ」や「ダッチサンドイッチ」の例を出すまでもなく、グローバル規模、しかもインターネット、デジタルをその主力とする事業は、課税標準、納税地の判定が重要。今後の法整備に注意していきたいです。

さて、この朝日新聞の記事、やはり紙媒体とデジタル媒体で内容が異なりました。

まずは見出しタイトル。

(紙媒体)    英、デジタル課税導入へ ー大手IT企業向け G7初

(デジタル媒体) 英、デジタル課税導入の方針 グーグルやFBなど対象か

これはあまり違いはありませんね。 大きく違いがあるのは下線部。このデジタル記事のまとめ部分でもある2段落が、紙媒体の記事ではまるまる省略されています。こうしてみると、デジタル記事はイギリス国内の政治的な動向も踏まえた報道であったことがわかります。一方の紙媒体記事では、「デジタル課税」にフォーカスを合わせることで、インパクトのある簡潔な内容となっています。

また、デジタル記事にはハモンド財務相の写真も掲載されていました。

f:id:Auggie:20181124052109j:plain

議会での演説前に英首相官邸前で立つハモンド財務相=29日、ロイター

以上、税関系記事の紹介でした。

 

現代租税法講座 第4巻 国際課税

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国際課税の基礎知識〔十訂版〕

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