「哲学書を読みたいんだけど、1冊読むなら何がいい?」
と聞かれたら、わたしは迷わずデカルトを薦めます。具体的には、『方法叙説』か『省察』かなあ。あ、モンテーニュとか、マルクス・アウレリウスの『自省録』もいいかも。
一生に一度は、すべてを根こそぎくつがえし、最初の土台から新たにはじめなくてはならない
けっして大仰な物言いでなく、誰もが人生で幾たびか経験していること。自分が母親にとって唯一の相手ではないと知らされた時。事故で体が再起不能なまでに損なわれた時。ある人の言葉に体の芯から揺さぶられた時。人は自分のこれまでの全体を語り直すほかないと思い定める。17世紀の哲学者の『省察』(井上庄七・森啓訳)から。
(鷲田清一)
40を超えてから、死ぬまでにもう一度、原語で読みたい本のリストを作り始めまして、デカルトはそのリストに入っています。
そういう読書会、やれたらいいなあ。