漂えど、沈まず。

文化系税理士 佐藤 龍 のブログです

事業承継税制の解釈と活用の実務(植田卓先生)(『近畿税理士会』 第656号 平成30年12/10)

「税理士」記事。

前回のこのカテゴリーの記事の続きで、「近畿税理士会」の記事です。

税理士対象の、事業承継についての研修の報告記事です。

講師は植田卓先生。

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全国統一研修会④ 事業承継税制の解釈と活用の実務
複雑な事業承継税制を読み解く
 10月4日から10月18日にかけて、全3会場において税理士の植田卓氏を講師に迎え、全国一研修会「事業継税制の解釈と活用の実務」が開催された。
 研修の408頁に及ぶレジュメは、条文の括弧書きに網掛けが付され、括弧書きの中の2段目以上の部分の文字は斜体で記載されている。また、改正部分には下線が付され新設された条文には「新設」と見出しが付けられるなど読みやすいようにエ夫がされている。
また、条文中の政令や省令委任には、委任先の政令や省令の条項が<>書きで表示されるなど、実務においても活用できるものである。
 冒頭、事業承継税制は非常に怖い制度である旨が強調された。期限内申告が要件であり宥恕規定はなく、都道府県知事の認定も必要であるので手続を失念すると救済されない。使えないと思い込んでいたら使えたというケースでは賠償請求される可能性がある。今回の改正で納税猶予の対象となる株式の範囲が広がったこともあり、慎重に対応していかなければならないと注意喚起された。
 事業承継税制を理解するには、都道府県知事の認定は円滑化法に規定されているので、租税特別措置法だけではなく円滑化法も確認していく必要がある。また、事業承継税制には直接関係ない
が、遺留分に関する民法の特例についても実務では理解しておく必要があると感じた。
 次に、一般の納税猶予制度と特例納税猶予制度の概要について共通点、相違点ついて確認がされた。共通する事項として、申告期限から5年問の事業承継側聞は、事業を継統することが必要で①猶予の対象となる株式等を全部保有し続けなければならない②後継者は代表者を退任することができない③同族関係者で50%超を保有し続け、かつ後継者は同族関係者の中で筆頭でなければならない、などの要件があり、これに反した場合は利子税と共に猶予税額を全額納付することになる。また、事業承継期間内に他の株主(他人を含む)から相続又は遺贈・贈与によって取得した株式等についても納税猶予を受けることができるが、申告期限が事業承継期間内のものに限られることなどが、留意点として説明された。
 中小企棄者の範囲では、資本金基準と従員数基準はいずれかに該当すれば良く、租税特別措置法で一般的に用いられている中小企業者の基準とは異なること、資本金1億円以下であっても制度を適用できない場合があること、1億円を超えていても制度を適用できる場合があることに注意が必要である。
 さらに、共通する重要な用語について、中でも資産保有型会社は、5年問の事業承継期問を過ぎても納税猶予の期限が確定する日まで、決算日だけではなくいずれの日においても要件を満たせば該当してしまうことに注意が必要であることなどが法令を確認しながら説明された。
 続いて、相続税の一般納税猶予制度、贈与税の一般納税猶予制度、相続税贈与税の特例納税猶予制度について雇用確保要件などそれぞれの留意点について説明が行われた。
 平成30年度改正において、特例制度が新たに設けられ閔心が高まっているが複雑な制度であり正確な理解が必要である。法令等を確認しながら留意点が解説された有意義な研修であった。   (取材・中西知行)

 

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